2023年は本をけっこう読めた。
数えてみると100ちょいだった。ペース的には学校がはじまってからのほうが読んでいて、よっぽどヒマしてたんだな〜という感じだ。
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春くらいから、お友達🕺の家(本が1500冊くらいある)にあそびにいくようになったのが大きい。踊りながら仕事をする友達🕺とおしゃべりしながら本を読んで、すこしダラダラして、いくつかの本を借りて帰る、という日がちらほらあった。
借りる本を厳選するのは超たのしい。こどものころ図書館で貸しだし冊数の上限に頭をなやませていた時のような、さいこうにワクワクする時間。
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ひまなので、本棚をひっくりかえして今年の10冊を選んでみた。
よみもの系
『それで君の声はどこにあるんだ? 黒人神学から学んだこと』榎本空
すきな本屋さんがオススメしていたので友達🕺に借りてよんだ。文章も装丁も、まとうオーラがすごくて、興奮ではやる手を抑えながらゆっくり読んだ。これまで抱いたことのない読後感。今年ナンバーワンかもしれない。
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黒人神学のジェイムズ・H・コーンに師事するため、NYのユニオン神学校に渡った作者のいわば留学記なのだけど、ただの留学記ではない。重い歴史と切実な現実の渦のなかに身をおいて、真剣に語り学び悩み、それでもなんとか生活をする。こういうのをほんとうの青春というのかもしれない。コーンが目のまえで机をコンコン叩いているような気がしてきて、(わたしはベッドで寝っころがっているだけなのだけど)とてもうれしかった。
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西加奈子の『サラバ!』を読んだ直後だったので、ニーナ・シモンを聴きながらよんだ。ニーナ・シモンはじぶんのファイトソングになった。
『ペーパームービー』内田也哉子
家族とか夫婦ってなんだろう、の関心のさきにいて、ずっと気になっていた内田也哉子さん。わたし、19才、文章をかいてって言われたって困っちゃうよォみたいなノリではじまるのに、とても19才とは思えない人生観、達観、圧巻。
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👆母(樹木希林)✌️父(内田裕也)、👌夫(本木雅弘)とのエピソードひとつひとつがぶっ飛んでいて、ドラマチックで、めちゃくちゃおしゃれで、なのに等身大で、おおきな愛にみちている。かと思えば、いきなりお風呂に話しかけたり、ワンダフル・カレー・パーリーナイトを開催したり、ちいさなユーモアにあふれている。
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也哉子さんがはじめて訳した絵本『たいせつなこと』もだいすき。ちなみに最近おばあちゃん家から絵本を大量にもって帰ってきて、寝るまえとかにじぶんに読み聞かせをしている。
〈ほかのノミネート〉
植本一子『個人的な三ヶ月 にぎやかな季節』はお子ちゃんと一子さんの関係がすごくよかった。金原ひとみ『パリの砂漠、東京の蜃気楼』はことばが鋭利すぎて脳汁どばった。西加奈子『くもをさがす』は大変ありがたく読んだ。ありがとう。李琴美『透明な膜を隔てながら』は(これはマジで良すぎるほんとうは余裕でランクインなのだけど李さんは小説のほうにいれたので遠慮、でもほんとにつよい)。松岡正剛『ルナティックス 月を遊学する』は登下校のおともだった。荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』は線をたくさん引いた。大切なことがたくさん書いてあった。
小説
『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰
すごい〜!よすぎる〜!つよすぎる〜!
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とある夜、新宿二丁目のバー「ポラリス」で交錯する女性たちをかいた7つのたんぺんで構成されている。ひとりひとりが複数形で生きているということが、ただそれとして伝わってくる。ある章の主人公が別の章にひょっこり登場するしかけも面白くて、じぶんで似顔絵つき相関図をつくって考察ごっこしてあそんだ。
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李さんには、「他者」を描くことについての圧倒的な信頼がある。あと、自分の作品を紹介するときに必ずしっかり自画自賛するところもすき。これからも追っかけたい。
『青と緑』ヴァージニア・ウルフちょ、西崎憲へん/やく
ヴァージニア・ウルフのたんぺん集。ちょっとしたウルフブームのときに『波』に挑戦してみたけれど数十ページで挫折。それでも気になっていたのでたんぺんなら、と読んでみたらすごくおもしろかった。
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いわゆるウルフ的な「意識の流れ」というかんじではない(らしい)けれど、このうえなく幻想的な世界を歩いているきぶんになってたのしい。Dr.ハインリッヒさんのネタをみているときと似たような感覚。具体的なできごとはほとんどなにも起こらない。湖面がゆれたり、燭台に水がしたたったりするだけ。なのにぐんぐん妄想がはかどる。
とくにすきだったのは『ラピンとラピノヴァ』『青と緑』『外から見たある女子寮』『サーチライト』
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ウルフをよむときはだいぶ意識を宇宙にとばさないと楽しめない。授業をうけるとか、労働をするとか、そういう地球にひきずりこまれそうなときに読んで、平静(あるいは酔狂?)を保っていきたい。
〈ほかのノミネート〉
朝井リョウ『正欲』はまえがきと怒涛のラストがよかった。映画もふくめていろんなひとと話せてよかった。安部公房『第四間氷期』は慣れるのに時間かかったけど超おもしろかった。ヘッセ『車輪の下で』はじぶんも一緒にうつぽくなっちゃった!でもおもしろかった。市川沙央『ハンチバック』はすごい。賞とれてほんとよかった。文學界新人賞のときの村田沙耶香と金原ひとみの評がちょうかっこよかった。町屋良平『スポーツ 基礎と応用』はめちゃおもしろい。予想をはるかにこえてきた。今村夏子『こちらあみ子』ははじめ衝撃でダウンしてしまった。そのあとこれをちゃんと読むための活動をして、それにすごく意味があった。山田詠美『ぼくは勉強ができない』は10年ぶりくらいに読んでおもしろすぎてビックリした。秀美くんさいこう。
かしこ系
〜〜〜編著(へんちょ)編〜〜〜
『記号化される先住民/女性/子ども』石原真衣へん
え!みなさん!集まってくれて!ほんとありがとう!わしが集めたわけじゃないけど!かっこよすぎる!ありがとう!というかんじ。
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北海道大学 アイヌ・先住民研究センターで2021年にかいさいされたシンポジウムを書籍化したもの。ぼんやりと石原真衣さん、内藤千珠子さんあたりが気になりはじめたころに新宿御苑まえの本屋で偶然みつけて手にとったら大あたりだった。すごい。互いの論をひきながら「記号化」というひとつの軸でつらぬいて華麗に共鳴・共振しているかんじ。最初はピンとこなかった専門領域のことなる6人の並びが、読後はスーパーチームのようにみえてくる。みなさんが巡りあい、互いの(時にひどい仕打ちをも受けてきた)仕事を評価しあっているさまは、アカデミズムの闇にさす尊い光のようにおもえた。という意味で、それぞれの論考のおもしろさはもちろんのこと、へんちょとしての学びがあった。とてもうれしい。
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内容もとてもおもしろかった。アイヌの当事者/他者表象における記号化と抑圧のプロセスが、考古学、文化人類学、フェミニズム、文学批評、現象学などの視点からしなやかに解剖される。特に内藤さんの章にぐっときた。じぶんと地続きな現在が内包する暴力構造をはっきり言語化したうえで、マイノリティとマジョリティの二元論の境界をゆさぶる可能性をフィクションに見いだす。ちょうど11月くらいにかんがえていたことをバチンと言い当ててくれた。きもちいい。さらに個人的に、ここしばらく社会学とインターセクショナリティの取り合わせがよくないかもなあと感じていたのだけど、「記号化の両義性」というところを考えていけばいいかも、というヒントをもらいました。ありがとう。
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どこまでも思慮深く、けっして安全な場所から見下ろしたりはしない。6人の言葉は、安っぽい「多文化共生」や「ダイバーシティ」とは対極にあって、希望に満ちた美しいものだった。これはとても有り難いこと、ほんとうにありがとうございます。
『現代思想 特集*インターセクショナリティ』2022年5月号
お世話になりました!これからもよろしく!というかんじ
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「インターセクショナリティ」という概念が練りあげられてきた歴史と、現在進行形で展開する広範な研究・実践を追ったもの。言葉は3年前くらいに知って、この号もかるく読んだことはあったけれど、ことしの4月にじぶんの研究は「インターセクショナル・デザイン」だよと先生に言われて、ああそうなんだァとおもってふたたび読みはじめた。今年はほんとうにここをベースに、いろんな本を行ったり来たりして過ぎた一年だったようにおもう。
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冒頭の討議はなんども読みかえしたうちのひとつ。石原さんの「ベル・フックスをちゃんと白人の立場で読みましたか?」という問いかけは、ゆっくり噛みくだきながらようやく理解しはじめたような気がする。じっさい、ここの日本人の「白人性」についての話題のなかで、ここって「黒人」の言い間違いじゃない?と思う部分があったのだけれど(友人宅でのフックス読書会でも「あれミスだと思って青土社に電話したわと言っている方がいた)いろいろ他の本を読むうちに、あ!これはミスなんかじゃないわ!とストンと腑におちる瞬間があったりもして、ゆっくり分かってきたかんじがして、とてもおもしろかった。
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やっぱりインターセクショナリティは、細い枝がどんどん伸びてひろがってゆくし、伸びた枝と枝は交差したり、根本でつながっていたりするからおもしろい。得てしてそういうものかもしれないけれど、へんちょであることの意味がある。これからもよろしく。
〈ほかのノミネート〉
川上未映子へん『早稲田文学増刊 女性号』は手に入れたとき震えた。これぞエレクトリカルパレードってかんじ。とくに多和田葉子『空っぽの瓶』に出会えてほんとによかった。雪舟さんは今日もさいこうだいすき。菊池夏野/堀江有里/飯野由里子へん『クィア・スタディーズをひらく3 健康/病, 障害, 身体』はたくさん線をひいた。どんどんひらこう!『現代思想22-06 特集*肉食主義を考える』はヴィーガニズム/カーニズムあたりのはなしにお熱になってた時期もあったなぁで懐かしい。土屋葉へん『障害があり女性であること:生活史からみる生きづらさ』は読みごたえがあったし、すごいプロジェクトだった。石井更幸へん『アルビノの話をしよう』は知れてよかったし、こういうのもっと読みたい。青本柚紀/高島鈴/水上文へん『われらははすでに共にある:反トランス差別ブックレット』は内容はもちろん表紙のイラストがすき。あと作家の生活とホンネみたいな文章だいすき。てぱとら委員会『私たちの中学お受験フェミニズム』はへ〜そうなんだ!あ〜そうだったかも!な感じでおもしろかった。
〜〜〜単著(たんちょ)編〜〜〜
『ACE:アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』アンジェラ・チェンちょ、羽生有希やく
東工大にきて間もないころ、とりあえずジェンダーと名のつく授業を学部にひとつだけ(ひとつだけ!?)みつけたので潜った。それが羽生先生の授業だった。
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あなたがエースだと自認しないにしても、それはあなたのためにあるんだ。(p.227)
アセクシュアルのレンズから社会を再考することで、いろんな紐をほどいている。おもしろい。
セックスを欲することが健康や人間性の要件であるべきではないのだ。(p.202)
言い切ってくれてありがとう。
脚注がとても充実していて、そこに訳者の想いが垣間みえてすごくよい。とくに「they/them」についての注がお気にいり。あとがきで「Welcome to the ace worlds」の訳出についてちゃんと説明してくれてたのもよかった。かこええ。仕事人だ。
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一橋の先生たちだったらがっぷりよっつ組み合って論破していたであろう生徒にたいしても、羽生先生は穏やかな口調で「論点はこうですか?」「なぜそう思うのですか?」と問いかけていたのが印象的だった。いっぽうで街頭や配信では(ボソボソと)アツい訴えをしていてかっこいい。
〈ほかのノミネート〉
D・カメロン/D・クーリックちょ、中村桃子/熊谷滋子/佐藤響子/クレア・マリィやく『ことばとセクシュアリティ』はどの章もめちゃおもしろい。中村桃子『「自分らしさ」と日本語』は研究でたいへんお世話になった。メールの返信はこなくてかなしい。周司あきら/高井ゆと里『トランスジェンダー入門』はもちろんよかった。毎日新聞取材班『ヤングケアラー:介護する子どもたち』は授業の課題でよんだ。こりゃーすごい。こんな仕事できたらいいなぁと思った。好井裕明『「感動ポルノ」と向き合う 障害者像にひそむ差別と排除』はかんたんな言葉でていねいに書かれていてわかりやすかった。
ポエ系
『茨木のり子集 言の葉3』茨木のり子
むかし地域の図書館の「日本の詩歌」コーナーで適当に手にとった詩集のなかの気にいった詩をひとつだけコピーして持ち帰るという、10円の暇つぶしをしていた。それがあるとき、机のひきだしからベロンと出てきたのが茨木のり子の「一人は賑やか」のコピーで、なんだこれ良すぎる〜〜!と思ってそのまま本屋に走った。
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『食卓に珈琲の匂い流れ』『倚りかからず』にすきな詩がいくつかあったし、エッセイもよめてうれしかった。なんというか、骨太でかっこよい。凛。
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茨木さんが暮らした家や若き日のポートレートをおさめた写真集『茨木のり子の家』、調理器具や食器の写真と直筆のレシピをおさめた『茨木のり子献立帖』もあつめてしまった。超いい。
『風の歌を聴け』村上春樹
村上春樹をすきな友達が「これが一番おもしろい(これ以降の作品はおなじことを延々といっているだけ)」というふれ込みでプレゼントしてくれた。
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読んでみたら超おもしろくて、しばらくポッケに入れて5周くらいしてしまった。どんな作品とか、どんな感想とかは、さんざん言われてそうなのでいいとして、わたしはこれはポエだな〜!ポエじゃん?と思って、そういう楽しみかたをしたので、ここで選んでみた。
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村上春樹は、高校のころ『ダンス・ダンス・ダンス』をよんで訳わかんなくてそれきりだったので、おもしろいジャン!と思えてよかった。思い立ったらダンス×3もまたよみたい。
〈ほかのノミネート〉
加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』はめっちゃカトチエ!ってかんじでたのしかった。青松輝『4』はふつうによくて、なんかよかった。平出奔『了解』は友達🕺に借りてけっこうおもしろかった。オノヨーコ『グレープフルーツジュース』はずーっと天啓をうけてるかんじ。天啓めっこをするにはぴったり。
漫画
『いやはや熱海くん(1)』田沼朝
こりゃいいね!さいこう!
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顔がきれいでポーっとしてる男の子のはなし。絵もきれいだし、笑いのツボとリズムがどストライク。熱海・足立・国島たちの会話にはいりたい。というかわたしのなかに既に3人がいるので日々がたのしくなっている。
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漫画はあまり読まないのでほかのピックアップはなし〜!
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いままでは読みたい/読むべき本をみつけるのが下手だったけど、ことしはわりと上手くいった気がする。偶然の出会いなんてものはなくて、ふだんから手繰りよせることがだいじ。
それにしても文章を書くのはほんとにめんどくさい。去年も言った気がするけど、来年こそは誰かとおしゃべりで済ませたいな〜